996制…120時間…過労に苦しむ韓中日の労働者たち
2021년 8월 1일
この文はハンギョレ新聞の[洪明教(ホン・ミョンギョ)の異床同夢]コラムです。
中国湖北省の丹江口職業技術学校に在学中の17歳のウィミンの専攻はコンピューターだ。しかし、ウィミンが半強制的に配属され た工場実習で投入された業務は、重たい箱の移動を一日中反復するというものだった。
中国共産党結党100周年記念式を6日後に控えた6月25日、ウィミンは故郷から1400キロ離れた広東省深センのある電子部品工場の寮の6階から転落して死亡した。学校当局や工場はウィミンの同僚たちを口止めした。このニュースはネットから瞬く間に消えた。数日後に父親が公開した遺書によると、ウィミンは1日11時間以上の長時間労働を繰り返しており、10日間の徹夜勤務をしていた。危険信号を感知して4回にわたって休暇を申請したものの、管理者はこれを無視した。
その工場では正社員、パートタイマー、職業学校から送られてきた実習生、ウイグル族労働者の4種類の労働契約が存在した。労働時間は実習生とウイグル族が最も長く、続いて正社員、パートタイマーの順だったが、賃金は正社員、パートタイマー、ウイグル族、実習生の順だった。これは、権利が弱いほど長時間労働の圧力も強くなるということを示している。
東アジアに共通する現象、過労死
長時間労働は東アジア諸国の一般的な現象のように見える。オックスフォード事典にも登録されているという「過労死」という概念そのものが日本で作られたものだ。昨年発行された日本の『過労死等防止対策白書』によると、2019年のパートタイマーを含む全労働者の年間平均労働時間は1669時間、フルタイム労働者の労働時間は1978時間だった。同年の経済協力開発機構(OECD)の平均年間労働時間は1726時間。日本でも過労死防止法の制定などの様々な努力がなされているが、まだまだ道は遠い。厚生労働省の資料によると、2014年から2016年までの日本国内の移住労働者の過労による死亡率は、日本国籍者の2倍以上。相対的に劣悪な労働権を持つ人々が、長時間労働をしていることになる。
このような現象は台湾や香港などの東アジアのほかの地域でも起きている。先日出版された『過労の島』(ファン・イリン、カオ・ヨウズ著、チャン・ヒャンミ訳)によると、2018年の台湾の年間労働時間は2135時間を記録。この本は脆弱労働者と若者世代の労働の強度が増していることをよく示している。香港の場合も同様だが、香港特別行政自治区立法会の報告書によると、2018年の香港の週間労働時間は、韓国や日本のような悪名高い「過労国家」より長く、特に熟練度の低い低賃金労働者でひどい。
これは私たちにとってもなじみ深い現実だ。何より韓国は世界的に労働時間の長い国として悪名高い。2019年のOECD統計によると、韓国の年間労働時間は35カ国平均より334時間多い2060時間を記録している。長時間労働は死につながることもある。2014年に盆唐ソウル大学病院脳神経センターが韓国の労働者の労働条件と脳出血の相関関係を分析したところ、9~12時間働く労働者は1日平均労働時間が4時間未満の人に比べて脳出血の発生リスクが38%、13時間以上働く人は94%高かった。最近、世界保健機関(WHO) と国際労働機関(ILO)が発表した研究報告書によると、2016年の1年間の韓国における長時間労働に起因する脳心血管系疾患による死者は、少なくとも2610人だった。業務や職業を要因とする自殺も年間400~500人と推計されている。長時間労働は心血管疾患、脳血管疾患、虚血性心疾患、精神的ストレスを誘発するため、突然死と過労自殺の原因となると指摘される。工場の寮から飛び降りた17歳の中国人労働者の死も、やはりこれと無関係ではないだろう。
東アジア諸国で長時間労働がまん延するのはなぜだろうか。多くの人が儒教文化をその原因として挙げている。「家族的な企業文化」が生んだ封建的で権威主義的な労働管理が、高い労働強度と長時間労働を引き起こすメカニズムとして作用したというのだ。さらに畳みかけるように、新自由主義的な構造調整が深刻化した通貨危機以降、私たちの職場は実績を強調する文化や絶対的な人手不足、過度な業務量に悩まされている。10人がすべき仕事を7人が行い、2人がしていた仕事を1人で行うため、労働は強化され、自発的過労は増えざるを得ない。
「過労社会中国」バッシングした韓国メディア
韓国の過労死問題には口をつぐむ「矛盾」
もう一人のウィミンを生むのか
近年、東アジア各国の労働者たちは、このような現実に立ち向かって消極的な抵抗を繰り広げてきた。2019年春、中国のIT企業の労働者たちは、「996制」(朝9時に出勤し、夜9時に退社する日課を週6日続ける慣行)に反対するキャンペーンを行った。数十万人の人々が呼応したことで資本と政府が反応した。馬雲のような資本家たちは996制を擁護する発言をして世論の袋叩きにあった。その後、過労死問題が相次いで公衆の話題になり、中国政府も積極的に対処する姿勢を取らなければならなかった。
今年6月14日、テンセントグループ傘下のゲーム開発会社は、社員に「水曜日の夜6時の強制退勤、延長勤務の場合は夜9時を超えない」との指針を発表した。こうした措置は、ほかのIT企業にも急速に広がっている。もちろん、これは企業の自発的な措置ではない。このままでは不満が爆発すると感じた政治権力がブレーキをかけたのだ。
さて、この点で韓国の保守メディアと政界の中国に対する見方には疑問が生じる。例えば、大統領直属の第4次産業革命委員会の初代委員長チャン・ビョンギュは、2019年10月に数度にわたって中国のビックテックの長時間労働例を紹介しつつ、IT業界に週52時間上限制を適用してはならないと発言した。ところが、中国で996制反対キャンペーンと過労死問題が浮上した際には過熱報道していたメディアは、労働時間の削減や重大災害企業処罰法などの国内問題においては徹底して反対の側に立った。資本に有利な時は一様に学ぼうと言い、不利な時は他人事扱いだ。最近のユン・ソクヨル前検察総長の「週120時間」発言も、こうした労働排除的視点が生んだハプニングだ。
今月初め、文在寅(ムン・ジェイン)政権は適用対象を大幅に縮小した重大災害処罰法施行令制定案を発表した。問題は同案が規定する「職業性疾病」から脳卒中などの脳心血管系疾患と筋骨格系疾患が抜けていることだ。死の行列を幇助する人々が堂々と法を作っており、多くの「ウィミンたち」は崖っぷちに追いやられている。 ✊
ホン・ミョンギョ|東アジア研究活動家
「プラットフォームC」活動家。東アジアの話を書きます。各社会の違いを理解し、同じ夢を志向しよう(異床同夢)との意味が込められています。理想を抱いた東アジアの夢(理想東夢。韓国語の発音は異床同夢と同じ)という意味も込められています。