東アジアに広がった反戦デモとドイツの軍備増強の逆説

東アジアに広がった反戦デモとドイツの軍備増強の逆説

市民社会では国境を超えて「平和」を要求  時ならぬ軍備増強の声に警戒すべき

2022년 3월 5일

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この文はハンギョレ新聞の[洪明教(ホン・ミョンギョ)の異床同夢]コラムです。

ウクライナ戦争が東アジアに及ぼす影響は少なくない。ロシアがミサイルを発射する前日の2月23日、台湾の蔡英文総統は軍に「警戒態勢を強化せよ」と指示した。それでいながら、蔡総統は最近になってロシア・ウクライナ情勢を中国・台湾に例えるメディアに向かって「二つの状況は根本的に違う」と述べた。ウクライナ戦争が台湾社会に及ぼす政治的影響を無視はしないが、すぐにでも中国が侵攻してくるという見解に対しては警戒するという立場だ。ただし、蔡総統は継続的に兵器輸入を増やしている。今年の台湾の国防予算は17兆3千億ウォンで過去最大規模だ。

昨年末以降、ウクライナ周辺地域にロシアが軍事力を集中させるなど緊張が高まると、台湾ではウクライナと台湾を比較する見解が出てきている。中華圏の保守主義者たちは、米国が中国に関心を集中するためにウクライナには関与できないだろうとか、ウクライナに関与しない場合は中国の地政学的な脅威について深刻には受け取らないだろうと主張する。特に、国民党などをはじめとする中国との関係回復を主張する政治勢力は、米国がウクライナ情勢に介入しないのと同様に、台湾に対してもそうするだろうとみている。このような主張は、中国との関係回復が必要だという主張を後押しする。遠くウクライナで惨劇が始まった状況でも、自分の立場の有利・不利ばかりを気にしているということだ。

複雑化した中国・台湾

ウクライナ侵攻のような国際情勢の激変に対する大衆の認識の変化は、政治にも大きな影響を及ぼす。そのため、中国共産党による強権統治を批判しながらも、台湾社会の非民主性や漢族中心性を批判してきた社会運動団体「ニューブルーム」は、ウクライナ戦争勃発後、まるで中国がすぐにでも台湾に侵攻してくるかのように騒ぐ政治勢力に批判的だ。国際情勢の激変を悪用し、半世紀以上独裁政権を保った保守勢力が羽振りを利かせかねないからだ。

中国政府も本音は複雑だ。王毅外相は「すべての国の主権・独立・領土を保全することは、国連憲章に基づいて作られた国際関係の基本原則であり、ウクライナも例外ではない」としながらも、「2015年に締結されたミンスク協定(ウクライナ政府とドンバス地方の反政府軍との間で締結)がウクライナ事態解決に向けた唯一の出口だ」と述べた。ロシアと近い関係を維持しつつ、事態を見守るという態勢だ。中国がNATOの東進に対しては批判しながらも、ロシアの侵略行為を遠まわしに批判していることは、原則ではなく実利が中国政府の判断基準であることを傍証する。このように中国が中途半端な態度を見せるのは、ロシアに対する歴史的不信があり、中央アジアの激変と欧州連合(EU)との関係悪化を望んでいないためだ。米国の対中圧迫が最大の関心事である習近平国家主席は、現状維持を最も好む。しかし、このような計算法は覇権競争の強化につながるだけだ。

一方、東アジアで市民社会の反戦の声も拡大している。1日、台北に位置するロシア代表部前では、約160団体の台湾の社会運動団体とウクライナ人たちが共に戦争に反対する集会を開いた。この行動は今後も毎週金曜日に行われる予定だ。言論の自由が保障されていない中国でも、平凡な人々の反戦の声は少なくない。先月26日未明、ある北京市民はロシア文化センターの門前に赤いラッカースプレーで戦争を糾弾するメッセージを残した。沈黙する多数は、バランスの取れた視点でこの戦争に反対している。

国境を超えた反戦運動は平凡な人々が選択できる最後の砦だ。戦争が起こり、どちらか一方の勝利で終わったとしても、それは市民の勝利とは言えない。戦勝国であれ敗戦国であれ、平凡な人々の死は報われない。

米国、中国、ロシア、NATOなどの帝国主義の競争が激化すれば、世界は再び戦争という過ちを繰り返す危険性が高い。20世紀に起きた二度の世界戦争が人類を抹殺寸前に追い込んだとすれば、来るべき世界戦争は人類そのものの破滅をもたらすだけだ。それは、海を渡った遠くで起こることではなく、私たちが愛する人々の死そのものだ。

ベトナムやイラク、アフガニスタン戦争が勃発した際、世界の市民が通りに出て「戦争反対」を叫びながら米国とロシアの帝国主義政策を批判したのは、決して無気力な両非論でも、現実と無関係な原則論でもなかった。それはむしろ、世界各国が民族主義とショービニズムに陥ることなく、ともに戦争反対の声を上げる基盤を提供する。

ロシアのプーチン大統領がキエフ(現地読みキーウ)に向けて自国軍の戦車を進撃させると、ロシアでは平和と民主主義を支持する市民による反戦デモが続いた。2月24日から3月1日まで主要都市で数十万人の市民が戦争反対の声をあげ、約7千人が逮捕されたが、市民不服従は続いている。平和を愛するという点で、ウクライナとロシアの平凡な人々はひとつだ。

時ならぬドイツの軍備増強に憂慮

こうした状況で、NATOの主要メンバーであるドイツ政府は、第2次世界大戦後から概ね守ってきた平和主義外交路線を破棄した。ドイツのオラフ・ショルツ首相は先月27日、国防費を国内総生産(GDP)の2%以上にまで引き上げ、「兵器の現代化に1千億ユーロを投入する」と明らかにした。さらに、対戦車兵器1千丁と軍用機撃墜のための地対空ミサイル「スティンガー」500機をウクライナに供給することを決めた。ドイツが軍備を増強し、兵器を支援すれば、ロシア市民の自発的な反戦運動は打撃を受けざるを得ない。真っ向から対立しているロシア内の反戦世論が武力侵攻に賛成する方向に傾けば、プーチン大統領にとっては非常に嬉しいことだろう。2020年の改憲で自分の出馬履歴を削除したプーチンは、次の大統領選挙にまたも出馬することが予想されるが、反戦デモは政治の構図を覆す要因になり得る。プーチンの狂気はNATOの東進では止まらなかった。EUの兵器増強の前でも同じだ。むしろ状況を極端へと押い込むだけだ。

東アジアも同様だ。私たちができる最善のことは、THAAD(高高度防衛ミサイル)配備などの無分別な兵器増強を支持したり、K防衛産業を称賛する詐欺師に投票したりすることではない。台北と北京、ソウルと東京の市民たちが帝国主義戦争の危険をともに防ごうと街に出てこそ、平和は回復する。モスクワとベルリンに集まった数十万人の反戦デモは、東アジアの平和とも無関係ではない。毎週金曜日の夕方、ロシア大使館前で開かれる反戦集会に注目しなければならないのもそのためだ。

洪明教(ホン・ミョンギョ)|東アジア研究活動家。プラットフォームC活動家 。東アジアの話を書く。タイトルには、それぞれの社会の違いを理解し同じ夢を目指す(異床同夢)という意味が込められている。理想を抱く東アジアの夢(理想東夢)という意味も込められている。